15.「 ホンダ・スーパーカブ」の面白い仲間たち。
まずはじめに・・・・。モンキーと同じく、まずは前書きから・・・、
やはりこの「キングオブオートバイ」と言える「ホンダ・スーパーカブ」は原付バイクを語る上で避けては通れない車種ではありますが、その偉大さ故に「書きにくい」のが本音です。おおよそこの世にこのバイクに精通していらっしゃる方は星の数ほど存在しているし、ブログでも動画でも書籍でも「ホンダ・スーパーカブ」に関するものはあまりにも多いので、悩んで悩んだ挙げ句・・・、私流としては「スーパーカブ」本体のことや歴史はここでは深堀りし無いことにしましたのでご了承ください。
そこで私流には「スーパーカブ」を本流とした、ちょっと珍しくて面白いモデルのいくつかをご紹介したいと思います。もちろん知識不足、勉強不足から手落ちや過ちも出てくるとは思いますが、そのあたりはいつものように大目に見ていただきたいと思います。見た目を見て「へえ~、こんなのもあったんだ」とこれからカブの世界に足を踏み入れようとなさっていらっしゃる方のご参考になればと思っています。
また今回も「Wikipedia」と共に「英知出版」様の1995年「絶版車ガイド」を参考にさせていただきます。
もう一つ「ちょっと珍しくて面白いモデル」というのは、「スーパーカブ」に関して言えばナント言ってもキング様なので、「スーパーカブを元にしたモデル」となると本来なら「モンキー」も「DAX」もCB50以前のスポーツモデル「CL」とか「CS」とか「SS」とかみんな仲間になってしまいます。
これは「横置き」(エンジンが前に倒れている形)「4サイクルOHV*」(後にOHCになりますが)エンジンでギヤも一体としたエンジン全体のこの形を「スーパーカブ」が採用して、それが『今日まで』細かい所はどんどん変化していますが『基本的な形』は変わっておらず、その形を継承している車種はあまりにも多すぎて網羅できないので、少なくとも「スーパーカブ」の見た目から大きく逸脱していないモデルに絞り込もうと思います。
*「OHV」「OHC」ってよく聞くけど何だ????
細かい機構は調べていただくとして、「OHV」(オーバーヘッドバルブ)古い、「OHC」(オーバーヘッドカム)新しい。
と考えていただいたらよろしいかと思います。「OHV」より古いと「サイドバルブエンジン」などが有り、「OHC」より新しいと「DOHC」(ダブルオーバーヘッドカム。ツインカムなどと言うときもあります)などがあります。
mc-web.jp
今のカブです。完成された素晴らしいデザインですよね。惚れ惚れしてしまいます。
私もそうでしたが、若い方がバイクの「カッコいい」と言う見た目に「レーシングマシン」を思い浮かべるのは、オートバイが乗り物である限り「速さ」を追求した頂点に有る「レーシングマシン」の形に憧れるのは当然のことでしょう。
私もその一人でした。1980年頃だとこの「スーパーカブ」は日常の足として、仕事の道具として今と同じように、街中にあふれていましたが、当時の若い私達の感覚では「カブ」は「ダサいバイク」でした・・・。
しかしカブが登場した1958年当時このカブは「最高にかっこいい!おしゃれの最先端」憧れのバイクだったそうです。
bike-lineage.org
初代「スーパーカブC100」です。C100といいますが50CCです。
上の写真と見比べていただけますか?ハンドルと前のタイヤのサスペンション以外はあまり変化を感じません。63年間大きく変わらないデザインて凄いとしか言いようがありませんよね。
しかしこのバイクが当時なんでこんなに憧れられたのか?といいますと、この当時1958年の他のバイクを見てみると・・・。
blog.goo.ne.jp
「スズキ・スズモペット」
autoby.jp
「田中工業・タスモペット」
とまあこういうバイクが原付50CCだったわけで、そこへ馬力は2倍の4.5ps,
最高速度70キロ(カタログ値)を謳って登場した「スーパーカブ」でしたからみんな飛びついたわけです。発売1年で月産1万台を突破、この「スーパカブ」増産の為に作られた「鈴鹿工場」が完成すると月産3万台を上回る。
これは私が「ロードパル」のところで書いた年間25万台の大ヒットの数字を上回るもので、その年代の経済背景の違いから行っても如何に「スーパーカブ」がバカ売れしたのか?がわかります。新車価格が55000円。当時の平均的サラリーマンのお給料が2万円台だった時代にです。
しかしそうは言っても「スーパーカブ」は仕事にも使えるバイク。もうちょっとなんとかならんのかなあ?・・・ということで登場したのが、
young-machine.com
1960年「ホンダC110スポーツカブ」
これはもう、文句なく「カッコいい」ですね。今の「ネイキッド」の源流を感じます。これでお蕎麦の出前は、しないと思います。当時の若者が憧れた気持ちが伝わってきます。
そしてこの流れは、同じようなデザインの「CS90」へと引き継がれ、この頃エンジンもより高回転高出力に対応しやすい「OHC」にカブも含めて変化していき「CS90」は「CL90」と言うオフロード系バイクを生み出し、「ヤマハDT1」の登場1968年によって「オフロードバイク」が、進化していきます。
オンロードバイクは、250CC2気筒の「C70」、125CCで「C90」、そして初の「CB」を冠した「CB92」から進化し「CB450」をへて1969年の「CB750」(ナナハン)へと繋がっていく。
ここで一旦原点へ帰りますが、その前にもう一台・・・。より「オフロード」へ、より「サーキット」へと進化していく過程の中で、今も絶大な人気を誇り売れているバイクに「CT125ハンターカブ」があります。
autoby.jp
カッコいいですね。大人気です。これもカブ系のエンジンを使った、よりオフロードに強い「ハンターカブ構想」というのが持ち上がります。
bikeblos.co.jp
これは「CT50」と言います。大元は1963年のハンターカブ55。そして1964年CT200(200と言っても90CCでした)これが1967年には「CT90」と進化しましたが、ここまではあくまで「輸出専用車」でした。やはり国内より国土の広い海外のほうが需要が大きかったと思います。
そして1968年にようやく「CT50」として国内販売が開始されました。このバイクの素晴らしいところは、「副変速機」を備えていたことです。
「CT90」の90CCエンジンから50CCへエンジンはスケールダウンしましたが、この「スーパートルクレンジ」と言われた「副変速機」を備えたことで、3速ATのロータリーチェンジに「高/低」のギヤを別に設けることによって3☓2の6速の変速ギヤを駆使することが出来ました。
通常の走りでは「高」☓3速で走り、山に入ったら「低」に切り替えれば、急坂でも物ともしない頼もしい力を発揮しました。
自転車の変速ギヤを想像していただけるとわかりやすいかと思いますが、自転車のギヤで言いますと、後ろタイヤに付いてる変速ギヤが普通の自転車のギヤでギヤの直径が大きくなるほど「力は出るけどスピードは出ない」となりますよね。これが「副変速機」の場合はペダルを漕ぐ所にある前の変速ギヤにあたり、ギヤの直径が大きくなるほど「重くはなるけどスピードは出る」となるわけで、前2段、後ろ5段変速でその自転車は10段変速と言われるのと、理屈は全く同じなわけです。
この山へ奥深く分け入ったり、砂地や泥濘地などを走るための「副変速機」と言う発想はとても魅力的で素晴らしい機構だと思います。
この「副変速機」付き車はその後レジャーミニバイクの「ホンダ・モトラ」にも搭載され、中古車市場では高値取引されているバイクになっています。
このスピードは出ないけれど強い力を発揮できるギヤの機構としては「副変速機」とは別に「エクストラ・ロー」発想というバイクもあります。1速のギヤ比だけを特別に大きく取って、山道や砂地など大きな駆動力が必要なときにはそれを使うと言う考え方です。代表的なバイクは「ホンダ・シルクロード250」に付いています。これは「エクストラ・ロー」へギヤを入れるときは、通常のクラッチとは別に小さなレバーがついていてそれを握って「エクストラ・ロー」へ入れるという本格的なものです。
また「カワサキ・スーパーシェルパ250」などはもともと6速ミッションですが、これの1速のギヤは「エクストラ・ロー」として、普通の1速より大きなギヤ比の設定になっています。大きな力を発揮できるということは「スピードは出ない」わけで、これがまた「歩く速度」でも、両足を地面に付きながらバランスを取って進む、2輪2足走行も可能となり山奥や柔らかい砂地でも「駆動力」を発揮できるようになっています。
「CT50」に話を戻しますが、このあとから1967年「CT90」1980年「CT110」2013年「クロスカブ110」2020年「CT125ハンターカブ」
autoby.jp
へと進化していくわけです。大きな流れはおわかりいただけたかと思います。
2つポイントをお話しますと・・・。
①「ハンターカブ」と言う名称はすべてのこの形のバイクの総称ではなく、時代によって「ハンターカブ」と呼ばれたり、呼ばれなかったりしている。しかし、現実的には総称としてこの形のスタイルのバイクは「ハンターカブ」と呼ばれることが多い。
②副変速機の機構もすでに現行の「ハンターカブ」にも「クロスカブ」にも付いておらず、一定の期間のモデルにしか付いていない。
というところが面白いと思います。私はこの手の機構は「大好き」なのですが、現行車では付いていないとなると「市場ではあまり必要とされていない」というメーカー判断があったのではないかと思います。
ですから私が中古で狙うとしたら、間違いなく1981年以降クロスカブ以前の「副変速機」付き車ということになります。
bikebros.co.jp
moto.webike.net
[
「外見から簡単に副変速機のありなしを見分ける」方法をご紹介します。・・
上が「ナシ」下が「付き」です。下のモデルの110と書いてあるステッカーの、「時計の7時方向」に固形石鹸のようなモナカのような出っ張りがありますが、これが「副変速機」です。上のモデルには付いていません。これで簡単に写真から「付き/ナシ」の判断ができます。
話が長くなりますが・・・。どうしても言いたいことがもう一つだけ・・・。これは上も下も同じですがまた110のステッカーの「時計の2時の方向」を見ていただくと黒いゴムホースが見えますが、この先にキャブからつながる「空気の給気口」があります。ほとんどリヤキャリヤと同じ高さです。そして排気管も他の「右向き写真」を見ていただくとおわかりのように、アップマフラーで排気口はリヤキャリアのすぐ下まで来ています。
これは長い時間は無理にしても、このバイクはこの高さ(吸気口と排気口)の下まで水没してもエンジンは動き続ける事ができる。ということです。これはとても良く考えられているなと思う、このバイクの素敵なところです。(路面状況などの諸条件によっては走行可能を保証するものではないとは思いますが、機構の発想が素晴らしいと思うのです。)
次はこれです
bikebros.co.jp
「何?ふつうの古そうなカブじゃん!」と言って頂いたらこのブログはあなたのために書いております。
カブにお詳しい方は「オ~~。これを忘れたら怒るでぇほんまに・・」といっていただけるのではないでしょうか。
「C240ポートカブ」と言います。ワタクシはこの手の方向性が大好きなのであります。このモデルは「スーパーカブの廉価版」というバイクです。ハンドルがパイプ製、ミッションは2速AT(当時のスーパーカブは3速AT)タイヤが「スーパーカブ」の17インチから15インチへ小径化、キックペダルは左側(普通は右側)で、しかも折り畳めない(普通は折り畳める)。極め付きは「ウインカーがない!!」「ストップランプも無い。」1962年昭和37年の発売当時はストップランプは「赤い反射板」、ウインカーは、「ライダーが右左折時に手を挙げる」で良かったのです。素晴らしすぎます。「スーパーカブ」が55000円で「ポートカブ」は43000円。
しかし、大して売れず2年で廃番となりました。(こういう希少性が大好きだ!)中古車が出ていないか探しましたが見つかりませんでした。(残念)
ところで、「スーパーカブ」ってどこが「スーパー」なの???って疑問のお答えをします。それは「スーパー」じゃないカブが存在していたからです。
wikipedia.jp
ちょっとわかりにくいかもしれませんがこれが「スーパーカブ」の元祖「ホンダ・カブF-2型」と呼ばれるものです。普通の自転車にエンジンをくっつけたモデルでタンクが赤いところからプロの方には「赤カブ」と呼ばれています。この頃はまだ「2サイクルエンジン」で100社以上が群雄割拠していた当時のオートバイメーカーの中から構造が複雑でお金もかかる高級な「新開発の4サイクルエンジン」を引っさげて、「スーパーカブC100」が誕生したわけです。
*4サイクルエンジンと2サイクルエンジン。
いつものように難しい話は抜きにしてザックリ簡単に表にしましたので見てください。
4サイクルエンジン | 2サイクルエンジン | |||
音 | 静か | うるさい | ||
普通の馬力 | そこそこ | あり | ||
構造 | 複雑 | シンプル | ||
高回転に | 強い | そこそこ | ||
燃費 | 有利 | 不利 | ||
排ガス規制 | 有利 | 不利 | ||
新旧で言えば | 新 | 旧 |
バイクのプロを目指していらっしゃらなければ、このくらいの感覚で思っていただければ、よろしいかと思います。
これにまつわるわかりやすい昔話しにお付き合いいただきます。
私がすでに2サイクルの熟成の粋に達しつつあった「スズキGT380」を乗り回していた頃、スズキから新しい4サイクルバイク「GS400」と言うバイクが出ました。流麗なスタイルに最新のDOHCツインカムエンジンを載せた、それはそれはかっこいいバイクでした。友人と良く箱根へ「ぶっ飛ばし」に行ったものですが、仲間の4人の内訳は「GT380」2台「GS400」2台で箱根のターンパイクと言う有料道路を「大観山」の頂上まで麓の料金所からレースをしたものです。何十回と走りましたが4サイクルの「GS400」は2サイクルの「GT380」に1度も勝つことは有りませんでした。当時は自分の腕が良いのだと思っていましたが、これが少しバイクのことがわかってくるととんでもない間違いだったことがわかりました。当時「GT380」の馬力は38ps「GS400」は36psでした。車重は若干「GS400」のほうが軽かったと思います。にもかかわらず「GS400」は全く一度も「GT380」の前に出ることは有りませんでした。「箱根ターンパイク」という有料道路は、長い直線の上り坂の多い道で、マシンはコーナリング性能より「エンジンの馬力」が物を言います。しかし馬力は2台ともほとんど同じ・・・。
実は私もわかりやすくするために単純に「馬力」と言っていますが、エンジンを評価するのには「〇〇PS」と共に「〇〇kg/m」と言う表示を目にされることと思います。これはトルクと言ってこれもエンジンの馬力を表す目安の一つなのです。
ほとんど同じ排気量の「GT380」と「GS400」パワーは2psの差でしたが、トルクは「GT380」が3.8kg/m、「GS400」が3.2kg/mと圧倒的に不利だったのです。
当時「新しい車種のGS400」の友人はいつも地団駄踏んでいましたがでいましたが、これは決して友人の腕のせいでもバイクのせいでもなく、「2サイクル」と「4サイクル」のトルクの差だったわけです。
しかしながら未来を睨んで、「燃費」や「排ガス規制」に有利な4サイクルエンジンをホンダは積極的に作っていきますが「馬力(トルク)が出やすくお金のかからない2サイクルエンジン」は、各メーカーが主流で使い続けていたわけです。
そんな中、当時の2サイクルエンジンの2倍の出力を持った「4サイクルエンジン」の出現は、まさに「スーパー」だったわけです。
地上の星を知ってほしい。これは「おもしろい仲間」とは言えませんが、レッキとして存在していた、この車種です。
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「スーパーカブC70」です。
なんの変哲もない70(73CC)のスーパーカブでしたが、20世紀末の頃は、スーパーカブは50,70,90の定番ラインアップがありました。今は車種が絞られていますから、50CCの上はすぐ90CCとか110CCや125CCとなっていますが「懐かしの・・」観点から言いますと70CCスーパーカブは活躍していたわけです。
ルーツは1961年のC105、これは54CC。中途半端ですが、原付50CCではどうしても物足りないと言う需要に答えるものだったのだと思います。そして1965年の「C65」63CCです細かく刻んできますね。そしてようやく1969年にC70として落ち着きます。
そしてこの流れが生産中止の2000年まで続きますのも、感慨深いものがあります。
特に目立った新機構などはなくただ50CCでは物足りない、90CCではエンジンが大きすぎるという、需要の為に存在していたC70。わかりやすいお話は「スーパーカブフリーク」と言われる「スーパーカブ」のスペシャリストの方々がノーマルの「スーパーカブ」を追い求めたときにたどり着くのはC70なのだそうです。大人のスーパーカブの大人の選択肢それが「スーパーカブC70」なのだそうです。
お付き合いいただきありがとうございました。「スーパーカブ」の面白い仲間たち「前編」の終了とさせていただきます。(まだやんのか)