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懐かしの原付きバイク大辞典 (Nostalgic moped bike dictionary)

より多くの人に原付バイクの楽しさを知ってもらいたい

13. スズキ・バンバン(バリエーションの極み)

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「スズキ・バンバン」

一度でもバイクを所有したり、興味のある方は、きっと名前は聞いた事があるでしょう。「どんな所でもバンバン走る」と言うイメージから付けられたこのバンバンと言うバイク。 名前の由来なんて、私も最近まで知りませんでしたが、モンキーにしても「猿の様に小さくて可愛い」でしょうし、ホンダモトラと言うバイクなどは「モンキー」の「トラック版」から2つを繋げて作られた造語です。

 

この「バルーンタイヤ」(風船みたいな大きなタイヤ)が特徴のこのバイクは1971年まずは「バンバン90」として世に出ました。

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「なんじゃこりゃ!」と言う衝撃的なスタイルの乗り物ですが、その前に1967年のモーターショウにて衝撃的デビューを飾った「ヤマハDT1」の存在があります。

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このバイクは日本に初めて「本格的な山道を走れる用バイク」として市場に圧倒的な支持を得て登場しましたが、その影響を受けてか?(未確認ですが)「もっと」「もっと」砂浜とか、ぬかるんだ道でも走れるバイクとして「バンバン90」は発売されました。

 

しかしこの2車を比べると・・・DT-1はスマートでカッコいいけれど「バンバン90」は、アブドーラ・ブッチャーのようでどうなんでしょ??って感じもしなくはない。

 

この一番の特徴的な「風船タイヤ」については、難しく語りだすと大変なので、今まで「革靴」しかない時代に、「登山靴」が便利で売れたのだから「かんじき」

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だって売れるだろう!と言う感じで、「より条件の悪い道でも有利なタイヤ」と思っていただいたらよいかと思います。

 

コンセプトとしては「どんな道でもバン!バン!走れる」ということで・・・ダジャレかよ!と言いたくなりますが、スズキさんとしてはそのようだったようです。

 

スズキと言うメーカーさんは、私が新車で「GT380」を所有していたよしみで言わさせていただきますが、やはり「鈴木修」会長がオーナーとしてしっかりいらっしゃるので、かなり「頑固」なところがあって、それが時として大変な効力を発揮したりします。日本はもとより世界に今でも数多くのファンを持つ私も大好きな自動車の「ジムニー」などは、

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軽自動車で本格的4WD車???そんな無茶な!!と全役員の反対の中「鈴木修」会長の鶴の一声で企画がスタートしたと言うことです。

 

バイクの名前でいうと「スズキ・コレダ」・・(バイクはこれだ!!!)とか面白いネーミングがあります。

 

 

話をもとに戻しますが・・・・。

 

このヘンテコリンでふくよかなバイクは、翌年1972年には「バンバン125」

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pinterest.ie

一回り大きな奴が登場します。しかし、私が感じるのには、スズキはこの「風船タイヤバイク」は相当世の中にブームを呼ぶに違いないと思っていたのかな?と思うほど開発と販売にその後も力を注いでいきます。が、それでは世の中に「カブ」や「ロードパル」のようにあちこちで見かけるか?というとそういうバイクと思えない。

 

私達の世代でも「ミニトレ」「DAX」は大流行でしたが「俺のバイク、バンバンなんだぜ!」という友達もいなかった・・。

 

これはプロの方もご賛同いただけるかと思いますが、今回データ集めで色々調べていてもこの「バンバン」の扱いは極めて「冷たい」。ネット情報が「薄い」のを感じました。

 

原付バイクの中でも「爆発的人気車」ではなかったと思います。

しかししかし・・・スズキは本気でした。この1972年には「バンバン50」(記事の先頭の写真)が登場し、翌1973年には「バンバン75」が登場。

 

「50」「75」「90」「125」とフルラインナップの完成です。

 

このバンバンシリーズで忘れてはならないのが「空気入れ」の存在です。「バイクのタイヤの空気なんかバイク屋で入れればいいんじゃないの?」と思いますが、「50」の一部の種類を除いてこのバンバンには「手動式空気入れ」が装備されていました。125CCの写真の「SUZUKI」のロゴが入ったシートの前部の下のフレームの下にシルバーの「筒」のようなものが見えますがこれが「空気入れ」です。

 

これはこのバイク独特の装備で前述の「風船タイヤ」に関係してます。このバンバンの「風船タイヤ」は「超低圧タイヤ」とも呼ばれ、海岸線や山道やぬかるんでいる道を走り時には「アスファルトの舗装路」を走るときより「タイヤの空気」をわざと抜いて、この風船が「パンパン」ではなく「フニャ」としていた状態で走ると走破性が格段に上がるようになっています。

 

そのために、山道に入るときに「空気を抜いて」走り、舗装路へ戻ってきたらまた「空気を入れる」と言う操作のために必要な装備なわけです。

 

今は「林道走行」が流行りで多くの方が、YOUTUBEに動画をアップされていらっしゃいますが、「バンバン」ではない普通のオフロード車でもこの「空気抜き」はよくやっているのを見かけます。

 

 

さて・・「空気入れ」のお話のあとは、「バンバン50」のバリエーションについてお話します。

 

 

その前に一つだけここで解説を入れます。私のブログの中でバイクの「変速機」について良く「AT」「MT」とか「ギヤ付き」とか「マニュアル」とか言う言い方をしてますが、難しい機構の話をすると、書く方も読む方も大変なので一旦ここでまとめておきます。

 

『AT』とはクラッチ操作のないバイクのことを言ってます「オートマチック」とか「オートマ」とか「ギヤなし」とかも言います。厳密に言えば「AT」も多くの種類があり、実はメーカーによっても、その構造には微妙な違いがありますが、それを言い始めたら大変なので、ここではひとくくりに「クラッチ操作をしなくて良いバイク」とします。車でいうと、ペダルが2つしかなくてアクセルとブレーキだけの車。ということになります。

 

バンバンについては「AT」とは自動遠心クラッチを表すこととして、ギヤはあるし「変速の操作」もするけれど、クラッチの操作はしなくて良い。つまりアクセルをひねれば走り出す。事を言います。自動エンジンクラッチのバイクとしては代表的なのは「ホンダスーパーカブ」がそれに当たります。 

 

それに対して

「MT」(本来の意味はマニュアルトランスミッションの略)とはクラッチ操作を必要とするギヤ付きバイクのことを指します。(ちなみにクラッチ操作を必要とするギヤなしバイクは有りません。ここでは単に「ギヤ付きバイク」とか「MT」とか「マニュアルバイク」とかいうことにします。

 

要は2つしかありません。「AT」は運転は楽だがスピードは出ない。「MT」は面倒なクラッチ操作はあるけれどスピードは出る。くらいに捉えていただけたらよろしいかと思います。(それでも50CCは、30キロ以上出してはいけない事になっているんですけれど)

 

さて表題の()内のサブテーマに「バリエーションの極み」と書きました。とても大きな存在感はあるにせよ、それほど爆発的人気があったようには思えなかった、このバンバンシリーズですが、スズキさんはこのバンバンに強い思い入れがあったように思えてなりません。

 

特に「バンバン50」はもともと「なんじゃこりゃ!」で登場した「バンバン90」でしたが、「ヤマハのミニトレ」「ホンダのDAX」による原付ブームによってお手軽スクーターも交えてこの手の50CCバイク全体に人気はまだまだあったように思えます。

 

そんな中、スズキの「レジャーバイク」の一角を担う「バンバン50」には、なんとしても多くの人に乗ってもらってその良さをわかってほしいと言う「意気込み」を感じます。それはこれからお話する「バンバン50」のバリエーションによっておわかりいただけるのではないかと思ってています。

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 発売当時の「バンバン50」はギヤ付きMTの3速で、前のばねはスプリング式でした(安いチープなタイプ)

 

なんとなく・・かっこ悪い?スタイルを「可愛く」演出するために「花柄シート生地」の「バンバン50G(デラックス)」を登場させました。

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 う~~ん・・・「可愛い」といえば可愛いか・・・・。

 

 

そして次に、男の子向けか?「バンバン50S(スポーツ)」登場。

 

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エンジンガードが付きました。前のバネを「油圧式 」にしました。お金はかかるが、バネはより良くなりました。ギヤを4速マニュアルにしました。私はこの手のバイクは「エンジンガード」は必須アイテムだと思っています。レジャーバイクだから舗装路のところばかり走るとは限りません。草がぼうぼう生えていて岩がゴツゴツしているところも走りたいもんです。なんたって「どんなところでもバンバン走る」はずだから。

 

しかし前の写真など見ると岩などがエンジンにぶつかったら「マフラー(排気管)」直撃です。だいたいマフラー(排気管)の材質は折れることはないですが凹みます。新品に変えればよいですが、それも面倒なので、そのまま走り続けることになります。しかしかっこ悪いし、売るときにも査定は大きく下げられます。燃料タンクとかマフラー(排気管)は、そのバイクの「顔」とも言える部分なのでここが傷ついていたり凹んでいたりすると買う側は買う気を失います。ということで査定も叩かれるということになります。

 

またデザイン上エンジンガードがないとなんかズボンを履いていないみたいで違和感があります。

 

その点でも「バンバン50S」はズボンが履けてよかったと思うのです。

 

 

次に・・・「山なんか行かないよ。もっと町中を楽に運転したい人」用にと「バンバン50T」が登場します。

 

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ズボンもいらないし(エンジンガードなし)、前後のタイヤが細くなりました。これによって町中での小回りが利きやすくなりました。(街乗り専門の方用?)

 

そしてもう「ギヤもいらないよ」ということで、オートマチックの「バンバン50A」も登場しました。

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左のグリップのところにレバーが有りませんね。

 

 

  新車価格 全長mm 車重 馬力 変速機 タイヤ 特記
バンバン50   1615 79kg 4.0ps 3速MT  
バンバン50G   1625 84kg 4.0ps 3速MT 花柄シート
バンバン50S 78000 1650 79kg 4.0ps 4速MT スポーツ
バンバン50T   1615 79kg 4.0ps 4速MT 街乗り
バンバン50A   1615 79kg 4.0ps 3速AT オートマ
バンバン75 95000 1625 86kg 6.5ps 4速MT 太い 2人乗り可
バンバン90 105000 1805 89.5kg 8.0ps 4速MT 太い  
バンバン125 185000 1960 109kg 11ps 5速MT 太い  
ウルフ 145000 1620 78.8kg 4.2ps 5速MT 太い 派生モデル
新バンバン125 輸出専用       5速MT 太い 4ストインジェクション
バンバン200 437600 2140 128kg 16ps 5速MT 太い 4ストインジェクション

 

この辺で一覧表を作ってみました。どうにも当時の新車価格がわからないところはご容赦ください。小さな変更点しか無いので大きく値段が変わっているとは思えませんが。

 

 

旧車のバンバンシリーズを一通りご紹介したところで、一覧表にある「ウルフ」に行ってみます。

 

このバイクは1982年にでた「バンバン」もどきのバイクなのですが、

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ウルフのフレームは新設計。エンジンもハスラー系の新しいパワーリードバルブのエンジン。なんかプラスチックみたいな素材で覆われていていかにも新しそう。

 

これを「旧バンバン」と併売していたというのだから・・・スズキの意図は如何に・・・???ホンダで言うところの「ノーティDAX」とか「R&P」なんかとライバルのようですが、いい感じなのに短命に終わったバイクです。

 

ここでまた名前の話。「スズキウルフ」というと、実は別のバイクもあるのです。1962年製「ウルフT90」というのが有りました。

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いかにも「昔のバイク」って感じですけれど、デザイン的には「カッコいい」って感じがします。

 

 

そして・・・もう一車種、1988年の「ウルフ」はこちら。

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「ウルフ250」と言います。当時は大流行のサーキット専用レーサーをモチーフにした「レーサーレプリカ」と言われたスズキの「RG250ガンマ」。

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時代を変えた名車と言われる「ヤマハRZ250」とがっぷり4つに組んだ人気車種でしたが、このカッコいいサーキット専用車みたいなバイクの「RG250ガンマ」の「カウル」を外して町中でも走りやすくしたのが「ウルフ250」だったわけです。この「ウルフ」は他にも125CC,50CCと設定があってどれもそこそこの人気車種でした。

 

しかしスズキは、どれほど「ウルフ」好きなのでしょうね。

 

 

さて、2000年にはバイクブームもすっかり下火になり各メーカーも「経営の存続」のために新車の販売種類をどんどん削っていた頃、月曜日の9時から「ビューティフルライフ」なるドラマが始まりました。SMAPのキムタク演じる美容師と不治の病に侵される常盤貴子さんとのラブストーリーでしたが、このドラマの中でキムタクさんが乗っていったのが「ヤマハTW200」。

 

これはもう大人気となりTW200ブームが起こりました。TW200というのは本来山道を得意とするバイクなんですがドラマではそれを「ストリート仕様」に改造して乗り回していたのですが、それが「カッコいい」ということになり、ベース車のTW200は中古車も新車もバカ売れ状況のなったわけです。

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これがベース車となった「ヤマハTW200」です。あら??なんとなくバンバンに似てませんか????

 

ということで・・・・。スズキも慌てて新車を出してきました。「新型バンバン200」です。

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前は125が一番大きかったのに、なぜか200・・・。もちろん「TW200」の対抗するためですが・・・・、しかし見た目はあのバンバンのボテッとしたイメージをしっかりと残しています。ドラマでは「ストリート仕様」にガッチリ改造されていた「TW200」でしたのでTW200の山を走る原車のイメージは残っていなかったのですが、せっかく新しくブームに乗ろうというのなら、もっと「軽やかな」スキッとしたデザインにすればよかったのではないかと思うのですが・・・それが違う・・。

 

そこに、バンバンに対するスズキの強い想いを感じるのでした。

 

 

そしてこの「バンバン200」には輸出専用車として「バンバン125」の設定があります。ワタシ的にはこの原付二種はいいなあと思いました。私の好きな「インジェクション」ですし・・・。

 

しかし自分で所有するなら旧車の「バンバン75」だと思います。なんかコロコロしていて可愛いし、2人乗りもできるし、しかし最近の「中古車市場」は完全な供給不足で昔は5万円くらいで変えた車種が軒並み「30万円~50万円」となっていてため息が出ます。新車が種類がないから種類が豊富にあった時代のバイクたちに人気が集まるからですね。バランスの問題だから仕方がない。けど高い・・・。しかしバイク屋さんも生き残っていかなきゃならないですしね。