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懐かしの原付きバイク大辞典 (Nostalgic moped bike dictionary)

より多くの人に原付バイクの楽しさを知ってもらいたい

10. ラッタッター♪ 時代を変えたロードパル♪

1980年代原付スクーターブームを巻き起こすきっかけを作ったのは、ご存じ「ホンダ・ロードパル」イタリアの世界的大女優の「ソフィア・ローレン」をCM起用し彼女が放ったとされる「ラッタッター♪」のコピーはもうロードパルそのものを表す代名詞ともなりました。1976年『新しい乗り物が生まれました』というフレーズとともに、今まで「バイク」に乗ったことのない自動車免許を持っている「女性層」を火付けのターゲットとして(普通自動車免許で50CCバイクは乗れます)59800円の価格で売り出されたロードパルは爆発的大ヒットとなりました。

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biokebros.co.jp

年間販売台数は、なんと25万台!!2019年の50CC~125CCまでのすべての原付きバイクの販売台数が14万台だったことを考えたら、たった1車種のバイクの売上としたら大変なものでした。

みなさんもよくご存知のことと思います。

 

それまで「自転車」に近くそれでいてヨーロッパではもてはやされているいわゆる「モペット」と言う自転車にエンジンが付いたような乗り物とは違う、スマートで軽そうでおしゃれな乗り物でした。

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https://ja.wikipedia.org

ロードパル以前からあった、「リトルホンダ」なんとなく重そうでゴツゴツしていますね。自転車のペダルが付いています。

 

ホンダのHPによれば当時の開発者さんたちが苦心したのは「なるべくエンジンを見せないデザインの工夫」(エンジンが付いていることを感じさせない軽やかなデザイン)だったそうで、エンジンと駆動系をコンパクトに一体化することによって見事に「エンジンの付いた自転車」に見えないようなデザインになっています。

 

これはその後に出てくるこの種類のバイクのデザイン上の「基本」になっていると思います。

 

ロードパルの成功はその「イメージ戦略」の成功でもあります。昔から似たような乗り物はあったのに「ソフィア・ローレン」をCMキャラクターに起用して、あくまでおしゃれに軽やかに街を走るイメージはその後のこの手のバイクCM戦略にも大きなクサビを打ちこんだと思います。

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 honda.co.jp

ちなみに上のリトルホンダの後継車種「ノビオ」はロードパルの大ヒットを受けて生産中止となりました。(重そうです)

 

さて、プロの販売店の方はご存知と思いますが、私達素人にはこのロードパルにいくつかの「種類」があったことはあまり知らないことだと思います。

 

次にはロードパルに進化の過程をお話していきます。

 

1976年発売のこのロードパルの「面白い特徴の一つに」「エンジンの始動方法」があります。

普通のバイクは50CCでもレバーを足で勢いよく押し下げて(キックすると言います)エンジンを掛けますが、これが慣れないとなかなか力の加減がわからず足が滑ってスネをぶつけたりして痛い思いをした経験のある方も多く、このロードパルではその打開策として「動作としては足でレバーを踏み降ろす」けれどその段階では直接エンジンを回すのではなく、この動作によってエンジンを始動するための「ゼンマイを巻く」という作業をします。

 

何回か「ゼンマイを巻いたら」それ以上巻けない状態になったら、ボタンを押したら「ゼンマイに貯められた力が開放されて」エンジンを回す(かける)システムを発明しました。

 

これは、とてもおもしろい作業で私もこの「ぜンマイを巻いてエンジンをかける」作業が面白くて(新鮮で)何度も何度もこの動作で「遊んだ」記憶があります。

 

しかしこの作業も慣れてしまうと人間というものは贅沢なもので飽きが来ます。本来完調なエンジンなら1回足を踏み降ろせば済むものを、バイクが古くなるに連れエンジンもかかりにくくなるとこの「ゼンマイを巻く作業」(フルにゼンマイが巻かれるのに4~5回はギコギコギコギコギコ・・・)を繰り返すことになります。

 

これはもうエンジンそのものが「不調」になったりすると、「大変な作業」へと変わってしまいます。

 

 

 

これを解決するべくアイディアが出て製品化されたのが、「ロードパル「L」」という種類です。この「ロードパルL」は一旦エンジンが掛かったらその回っているエンジンの力を利用して次にエンジンをかけるための「ぜンマイ」を「事前に巻いてしまおう」と言うものでした。

 

つまり一旦エンジンが掛かってしまえば、バイクを止めてエンジンを切って次に走り出すときには、「ただボタンを押すだけで良い」(ゼンマイが開放される)というものでした。これは1流の技術屋さんでもあった本田宗一郎さんのアイディアだと言われています(確認はしていませんが・・・)流石に頭が良いです。

 

しかしこのアイディアにも欠点があり「1回でエンジンが調子よく始動」すれば良いけれど、1発めでエンジンがかからないとまた「例の」「ギコギコギコギコギコ・・・」をやる羽目になるということでした。

 

コロンブスのたまご」を世に出すと言う意味では、このゼンマイ始動方式はとてもおもしろい発想だと「造り手」の方たちの苦労は計り知れないと思いますが、私が前に「チョイノリ」のご紹介のときに書きましたが、この機械モノが古くなったときの「耐久性」を考えると、私が友人が所有していたロードパルを借りていて感じたことは「ゼンマイ機構」は錆びたら動きが悪くなる。ということでした。

 

次に「消費者」の要望に答えるために出てきたのが「ロードパル」「S」でした。これは、「馬力を上げる」2.2→2.5psへ、2速の変速機構を取り入れて、「加速を良くし、力強さを増した」。始動時のチョークレバー操作をやめて「オートチョーク機構」による始動方法にした。

 

しかしそれによって当初の59800円だった価格は73000円まで跳ね上がり、価格の安さも売り物のロードパルの特徴が薄れた(ライバルのヤマハパッソルが69800円)ので、この時期同時に「ロードパルS」から「2速変速機構」だけ取り去った「ロードパル」「E」なるものが63000円で同時発売されました。(結局このバイクには「走りの力強さ」を強く求める層ばかりではなかったということでしょうか)

 

結局ロードパルは、「初期型」「L」「S」「E」と4種類存在していたことになります。

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bikebros.co.jp

 

ロードパルの後継種は一応この「ホンダ・ピープル」1984年ですが、どう見ても時代に逆行していて売れるようには見えませんね。ロードパルのあまりの斬新さと素晴らしさを改めて実感します。

 

そして実質的後継車は「タクト」になっていきます。


 

次回は「ロードパルのライバルたち」をお送り予定です。